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新年のごあいさつ(2023年 飯島会長年頭所感)

一般社団法人日本パン工業会
会 長 飯島 延浩

 新年明けましておめでとうございます。

 皆様には、日頃から製パン業界の発展に格別のご指導ご支援を賜っておりますことに深く感謝し、厚く御礼申し上げます。
 新型コロナウイルスの発生からほぼ3年が経過し、一区切りの時を迎えつつあり、徐々にウイズコロナ、アフターコロナに向けた施策へと転換する動きもみられるように思いますが、一方で、感染拡大の懸念は今なお続いており、食料の安定供給という重要な使命を担う製パン業界といたしましては、従業員の感染予防対策やワクチン接種の推進等を引き続き徹底し、事業継続に努めて参ります。

 経営の面では、本年は他の食品業界と同様、小麦、油脂、包材等の原材料価格、電気・ガス・ガソリン等のエネルギーコストの上昇への対応が大きな課題となっています。
 当会の多くの会員企業では、昨年1月と7月に価格改定を実施いたしまして、取引先からは概ねご理解をいただいたものの、PB製品等では厳しい面も見られます。
 お客様の側でも、諸物価の高騰が続き、家計負担が増している中で、節約志向が支配的であり、単純な値上げのみでは受け入れていただけず、低価格帯製品を選ばれる方も多く、製品の2極化、3極化の傾向が強まっております。
 また、価格改定後もなおコストアップ分を全て吸収できるまでには至らない状況であり、業界全体として、忍耐の時であると考えております。

 昨年は、10月期からの輸入小麦の政府売渡価格が据え置かれ、製パン業界にとって有効な措置を講じていただきました。しかしながら、その後もウクライナ情勢や円安などを背景として、油脂、卵など多くの原材料価格の上昇が続いており、さらにエネルギーコストの上昇も大きな負担となっています。また、本年4月には、これまで据え置かれていた輸入麦の政府売渡価格の改定が予定されております。

 このような情勢の下、私どもとしましては、輸入麦価改定後の粉価の改定を踏まえた7月の食パン、菓子パン、和洋菓子の価格改定等を含め、会員各社がそれぞれ知恵を出して間違いのない施策を講じ、お客様のニーズを的確に捉え、この難局を乗り越えることができるよう、しっかりと対応していく必要があります。

 昨今の世界的な食料供給の不安定化の中、政府では、食料安全保障の強化を図る観点から、国産小麦・米粉の利用拡大を重要な施策の一つとされ、製パン業界にも一層の取組を要請されております。
 これらについては、第三者機関である日本パン技術研究所が、パン類への国産小麦の使用に向けて科学的根拠に立った見解をまとめて下さる予定です。製パン業界としても、これを踏まえつつ、しっかりと取り組んでいきたいと考えておりますので、これら国産原料の量的・質的な面での安定向上や、使いやすい価格帯での供給のため、行政からもお力添えをいただきたいと考えております。

 製パン業界とお取引のある原材料メーカーや流通事業者の皆様との適正取引の実現につきましても、2021年12月に策定されました「適正取引推進ガイドライン」を活用し、引き続き関係法令への適切な対応等を通じ、製パン業界のあるべき姿の実現を目指して努力してまいります。

 こうした課題のほか、食品ロスの削減、プラスチック資源循環や低炭素社会実現に向けた各種施策への対応、そして、学校パン給食の推進を含むパン食の需要拡大など、多くの課題の解決に取り組んでいく考えです。

 当会は、本年、創立60周年という節目の年を迎えます。
 記念事業の一つとして、1993年(平成5年)3月にスタートした当会の科学技術委員会の歩みについて取りまとめる予定です。この科学技術委員会は、製パン業界内の生産面における課題に対し、科学的根拠をもって業界が一致できるよう、共通の基盤づくりのための検討と解決を図ってまいりました。また、この科学技術委員会での議論を踏まえて日本パン公正取引協議会が設立されましたが、同協議会とともに、当会は、業界をめぐる表示や公正取引等を含めたあらゆる課題の解決に向けた検討を重ね、この積み重ねが業界の発展と信頼の構築につながってきたと考えております。

創立60周年を機に、製パン業界全体として更に一致協力し、取り巻く課題に丁寧に対応してまいりたいと考えておりますので、本年も皆様の変わらぬご支援、ご鞭撻を賜りますようお願い申し上げます。