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循環型社会形成自主行動計画2030

2023年 1月 24日更新

一般社団法人 日本パン工業会

 製パン事業に携わる当会の会員企業は、毎日、多種類かつ大量のパンを生産し、全国各地の小売店、消費者にお届けし、安全安心な食料供給に努めていますが、その受注~生産~物流~販売等の事業活動や消費段階において、食品ロスや、各種プラスチック製等の資材、容器包装等の廃棄物を排出しています。
 一方、これら廃棄物に関しては、わが国全体で、その発生抑制と再資源化などによる有効活用がより一層求められています。具体的には、食品企業の大きな課題である食品廃棄物については、2012 年の食品リサイクル法や 2019 年に成立した食品ロス削減推進法に基づく発生抑制やリサイクル推進の取組みです。また、プラスチック廃棄物については、従来から容器包装リサイクル法に基づき、最も再資源化の課題の多いプラスチック製容器包装の3R(リデュース・リユース・リサイクル)の取組み等が求められていましたが、近年、海洋プラスチックごみやマイクロプラスチック問題が世界的に大きな課題となる中、 2021年6月に成立したプラスチック資源循環促進法に基づき発生抑制や効率的な資源循環の取組みが、今後より一層推進されることとなります。
 当会においては、これまで、廃棄物の発生抑制と有効利用を推進するための「環境自主行動計画」を策定し、食品廃棄物を含む総廃棄物(廃プラ、ガラス、汚泥など)の発生抑制と有効利用に積極的かつ継続的に取り組むとともに、プラスチック製容器包装の削減を図るための「容器包装の3R推進に係る自主行動計画」を策定し、その薄肉化、減量化に努めたことにより、それぞれ目標を上回る成果を挙げてきました(参考資料参照)が、今後ともこれらの取組みを継続し更に推進していくことが重要です。
 今般、廃棄物に関する「環境自主行動計画」及び「容器包装の3R推進に係る自主行動計画」が 2020年度で終了したことを機に、2021年度以降に取り組むべき計画として、廃棄物対策を対象とした「環境自主行動計画」と容器包装の3R対策を対象とした「容器包装の3R推進に係る自主行動計画」を統合し、新たに「循環型社会形成自主行動計画2030」を以下の通り策定します。

1. 廃棄物対策

【目 標】

① 総廃棄物の再資源化率を、2021~2030 年度の期間、個別会員では 70%を最低基準とし、全体では 90%以上とする。
② 食品廃棄物の再資源化率を、2021~2030 年度の期間、個別会員では 85%を最低基準とし、全体では 95%以上とする。

【目標設定の考え方】

 廃棄物については、再資源化を積極的に進めることを中心に目標を定め、その排出抑制と有効利用に努める。
 総廃棄物に係る再資源化率の目標については、会員各社の取組状況を踏まえ、個別会員における最低基準はこれまでと同じとし、全体では 10%高める。食品廃棄物に係る目標については、会員各社の取組状況を踏まえ、個別会員における最低基準はこれまでと同じとし、全体では食品リサイクル法で定められた水準(95%)と同じとする。
 なお、本目標については、現行制度の見直しや新たな制度によって、更なる対応が必要となる可能性もあることから、その動向、会員各社の取組み状況を踏まえて、必要があれば適宜見直しを行うとともに、5 年後の 2025 年度に実績等を検証の上で改めて検討することとする。また、プラスチック廃棄物については、近年排出抑制と再資源化を合理的に推進する資源循環が大きな課題となっており、関係団体等の動向を踏まえつつ、新たな目標等が必要な場合は策定を検討する。

【目標達成のための具体的施策】

(1) 会員各社において、目標の達成に向け、社内に対策を推進するための管理体制を整備し、組織的、継続的に改善を図る。また、プラスチック廃棄物の排出抑制と有効利用・循環を推進するための具体的な取組計画を策定する。

(2)食品廃棄物への対策

・食品廃棄物の発生抑制(ロス削減など)

・食パン耳などの食品原料への利用拡大

・食品廃棄物の再資源化促進(飼料化、肥料化など)

・消費期限、賞味期限の延長(販売店、家庭での食品ロス削減)

・規格外農産物の活用(生産地における食品ロス削減)

・受発注時間の見直しによる見込生産の改善

・アイテムコントロール(合理的な削減)による原材料ロスの削減

・AIなどの新技術を活用した適正在庫、生産予測精度向上による生産ロス、 原材料ロス削減の検討

・フードバンクなどへの有効活用の検討

(3)プラスチック廃棄物への対策

・包材ロスの削減(プラスチック廃棄物)

・廃プラスチック等の再資源化(固形燃料等も含め)の促進

・プラスチック製の資材(番重、パレット、保冷箱、プラシートなど)の再資源化

・ワンウエイプラスチック(納品容器、使い捨てコップ、食器など)の使用抑制

・海洋プラスチックごみ、マイクロプラスチックの削減につながる河川、海岸、 市街地、工場周辺などでの環境整備、美化清掃活動

・バイオマスプラスチック、再生材などの新素材の導入に向けた調査、検討

・異業種との連携による新技術による取組み

(4)その他の廃棄物および共通する対策

・委託業者及び処理方法などの見直しによる適正処理ならびに再資源化の推進

・分別の徹底による再資源化の推進

・アイテムコントロール(合理的な削減)による原材料ロスの削減

・受発注時間の見直しによる見込生産の改善

・原材料納品の通い箱使用拡大(ダンボール廃棄物などの削減)

・包材ロスの削減(紙、PETボトル、ダンボールなど)

・排水処理による汚泥の削減(汚泥減容装置導入による発生抑制や乾燥炉導入に よる減量化、日常的な排水の負荷低減活動など)

・環境配慮製品、グリーン購入の促進

【フォローアップ等の取組み】

(1)毎年の実績を把握し、進捗状況の確認、対策の修正など、目標達成のための必要なフォローアップを行う。

(2)本計画の取組状況を当会ホームページ等で公開する。

(3)当会環境対策小委員会において会員各企業の情報交換を促進し、有効な具体策の共有により、効率的な活動につなげる。

2.容器包装の3R対策

【目 標】

2004年度を基準年として、2030年度までに生産高原単位(生産高10億円当たりのプラスチック製容器包装排出量)対比で25%削減する。

・「排出量」は、各社が日本容器包装リサイクル協会に申請する再商品化義務量の算定方法(自主算定方式又は簡易算定方式)に応じて、排出見込量又は容器包装使用量のいずれかとする。

・再商品化義務のない容器包装使用分(プライベートブランド製品等への使用)に相当する排出量は除外する。

・排出量及び生産高算出の年度の区切りは、各社の事業年度とする。

【目標設定の考え方】

 容器包装については、パンの容器包装の特性もあり、リユースやリサイクルは現状では目標が定めにくいことから、リデュースに関して目標を定める(パンの容器包装の特性と3Rに関する当会の考え方については別添参照)。
 会員企業が製品に使用する容器包装の大部分がプラスチック製であることから、プラスチック容器包装に絞った目標設定とする。また、2019年に公表された「プラスチック資源循環戦略」におけるリデュースの今後の戦略展開では、「2030年までに、ワンウェイのプラスチック(容器包装等)をこれまでの努力を含め累積で25%排出抑制するよう目指す」とされていることから、これまでの努力を反映させるとともに、今後も削減努力を続けていくため、基準年をこれまでの自主行動計画と同様の2004年度とし、生産高(10億円当たり)対比で基準年(2004年度)に対し、2030年までに25%の削減を図ることを目標とする。
 なお、本目標については、同戦略において「消費者はじめ国民各界各層の理解と連携協働の促進により、代替品が環境に与える影響を考慮しつつ排出抑制を図る」とされていることや、新型コロナウイルスの影響によりプラスチックの役割が再認識されていること、プラスチック製容器包装・製品の軽量化・代替素材への転換に係る技術革新の今後の動向等が排出の抑制に大きな影響を与え得ることから、これらの動向や会員各社の取組状況を踏まえて、必要があれば適宜見直しを行うとともに、5年後の2025年度に実績等を検証の上で改めて検討することとする。

【目標達成のための具体的施策】

(1)以下の「容器包装の環境配慮設計指針」(環境に配慮した容器包装の設計を行うに当たっての考え方、留意する視点について示したもの)に沿って、会員各社が3Rの取組みを強化することにより、目標達成を図る。

(2)関連団体、他業種などとの連携による、自主的な回収の取組みの検討

(3)代替素材の検討

(4)素材メーカー、包材メーカーとの連携協働による、新素材、新技術開発

(5)化学的手法、エネルギー利用など、新しい再資源化技術の検討

<当会における容器包装の環境配慮設計指針>

  会員各社が、パン和洋菓子製品等の特性を考慮した上で、中身製品のロス削減や物流過程等を含めたトータル的な環境負荷の低減を目的として、以下の各項目に充分留意し、環境に配慮した容器包装の設計に努める。

①中身製品の食品安全衛生及び品質保持を最優先に考慮する。

②消費者の利便性(使い易さ、開け易さ等)を充分に考慮する。

③中身製品の廃棄ロス削減につながる設計を行う。(保存性向上、適正な設定による消費期限・賞味期限の延長、適量包装、配送時の破損防止等)

④以下の減量化対策を行う。

1)過剰包装の見直し(形状、仕切り、トレー、多重包装、内袋等)

2)軽量化、薄肉化(フィルム、パック等の厚さ、材質の見直し等)
※フィルム包材は厚さ30ミクロン以下のものが多くなっていることから、この厚さを目安とする。

3)サイズの適正化(容器の大きさ、高さ、幅、袋のピッチ等)

4)空間率(容器包装の隙間)は原則的に20%以下とする。

⑤分別し易いものにする。(材質の単一化、複数材質の場合は容易に分離できる設計)

⑥リサイクルし易いものにする。(単一素材の変更等)

⑦包材の廃棄ロス削減につながる設計を行う。(ロット、機械耐性、シール性、強度等)

⑧物流過程での環境負荷低減を行う。(積載率を高める形状、梱包資材の通い箱化等)

⑨販売段階での環境負荷低減を行う。(レジ袋削減、ベーカリー店舗でのまとめ包装等)

⑩使用段階での環境負荷低減を行う。(食べきりサイズ等)

⑪再生材・新素材の使用等を行う。(リサイクル材、バイオマス(植物由来)プラスチック等)

⑫従来品に比べ改善または環境配慮項目をより多く反映させる。

⑬複数の製品に使用できる汎用性を高める。(トレーの共有化等)

⑭わかりやすい表示を行う。(中身製品の廃棄ロス削減のためのわかりやすい保存方法や期限表示等)

【フォローアップ等の取組み】

(1)毎年の実績を把握し、進捗状況の確認、対策の修正など目標達成のための必要なフォローアップを行う。

(2)自主行動計画に掲げる目標達成のための会全体の取組み状況及び会員各社が自主的に環境配慮設計に取り組んだ事例を当会ホームページ等で公開し、環境配慮に関する消費者との相互理解の促進につなげる。

(3)当会環境対策小委員会において会員各企業の情報交換を促進させる。会員各社においては、目標の達成に向け、社内に対策を推進するための管理体制を整備し、組織的、継続的に改善を図る。

(参考資料)現行計画に対するこれまでの実績(2021年度時点)

○ 環境自主行動計画(廃棄物関連)

 「総廃棄物の再資源化率を、2021~2030年度の期間、個別会員では70%を最低基準とし、全体では90%以上とする。」という目標に対し、2021年度は、各社で積極的に取り組んだ結果、15社が最低基準を達成、全体では93.8%となった。
 「食品廃棄物の再資源化率を、2021~2030年度の期間、個別会員では85%を最低基準とし、全体では95%以上とする。」という目標に対し、2021年度は、各社で積極的に取り組んだ結果、15社が個別基準を達成、全体では98.3%となった。

  2017年度 2018年度 2019年度 2020年度 2021年度
総廃棄物排出量(千t) 278.2 278.3 279.6 274.9 274.9
再資源化率(%) 95.0 94.6 95.0 94.5 93.8
食品廃棄物発生量(千t) 190.1 190.5 192.0 188.1 184.8
再資源化率(%) 98.3 98.2 98.4 96.4 98.3

(注1) パン粉・菓子用等の食品仕向け量は除いている
(注2) 算出会員企業数 2017~2020年度:18社、2021年度:17社

○ 容器包装の3R推進に係る環境自主行動計画

 「2004年度を基準年として、2030年度までに生産高原単位(生産高10億円当たりのプラスチック製容器包装排出量)対比で25%削減する」という目標に対し、2021年度は、各社とも引き続きの取り組みを進めた結果、包装フィルムの薄肉化や寸法見直し、プラスチックトレーの不使用化等により2004年度からの削減率は、-18.0%となった。

  2004年度
(基準年)
2017年度 2018年度 2019年度 2020年度 2021年度
排出見込量(t) 32,579 30,215 29,697 30,184 30,548 29,625
原単位(生産高10億円当たりの排出量(t)/10億円) 29.4 24.4 23.9 24.1 25.0 24.1
基準年(2004年度)からの削減率(%) -17.0 -18.8 -18.0 -15.2 -18.0

(2021年度会員18社集計)

(別添)パンの容器包装の特性と3Rに関する当会の考え方

 製パン事業者は、毎日多種類のパン類を大量に製造し、全国各地の小売店へお届けし、それらの製品は消費者の皆様に購入、消費されています。このように消費者の皆様へ安全・安心で高品質なパン類をリーズナブルな価格でお届けできるのは、工場で製造したパン類を包装することで、食中毒をもたらす微生物の汚染を防ぎ、カビの発生を抑制し、乾燥等の品質劣化を防ぐことでパン類が日持ちするようになり、また容器包装によって効率的な物流と販売が可能になったことが大きく貢献しています。さらに容器包装は、食品表示法や公正競争規約等に則り適正な表示を行い、消費者へ正確な情報提供を行うという機能も有しており、製品にとって容器包装は必要不可欠なものとなっています。
 一方、中身が利用された後は、容器包装は不要となり、家庭ごみなどの一般廃棄物として廃棄されるため、容器包装廃棄物の増加にともない、循環型社会の形成に向けて容器包装の3R(リデュース・リユース・リサイクル)の推進が求められています。
 このような中、当会は、会員各社が容器包装の薄肉化、減量化等により、リデュースに努めていますが、これらは限界に近づいており、今後は素材メーカーや包材メーカーとの連携による更なる技術レベルの向上が不可欠であるとともに、中身製品のロス削減や物流過程などを含めたトータル的な環境負荷低減を目指す、環境配慮設計の考え方が重要となります。
 一方、リユースに関しては、パン類の容器包装の再使用は安全性やコスト面から非常に難しく現実的ではないと考えています。また、リサイクルに関しては、法律に基づいて再商品化義務を果たしています。しかし、現在プラスチック容器包装のリサイクルについては、材料リサイクルを優先する制度運用が行なわれていますが、プラスチックの特性から、材料リサイクルは多大なコストを要する反面、リサイクル製品の付加価値は低く、さらに約半量が残渣となるなど課題も多いのが現状です。このため、当会では、容器包装の状態に見合った合理的なリサイクル手法の採用を継続して主張しており、例えばプラスチック容器包装が有する優れたエネルギー資源としての特性を活用した固形燃料化などのリサイクル手法を、緊急的・補完的な位置付けとするのではなく、広く採用すべきであると考えています。